監督・脚本:キム・ボラ
出演:パク・ジフ、キム・セビョク、イ・スンヨン、チョン・インギ
2018年、韓国、アメリカ、138分、PG12
英題:HOUSE OF HUMMINGBIRD/原題「벌새」
(C) 2018 EPIPHANY FILMS. All Rights Reserved.
提供:アニモプロデュース、朝日新聞社
配給:アニモプロデュース
配給協力:ギャガGAGA★
Introduction
誰しも経験したことのあるだろう思春期特有の揺れ動く思い、 家族や友人との関わりを繊細に描いた映画『はちどり』。 2018年釜山国際映画祭での初上映を皮切りに、 ベルリン国際映画祭をはじめ国内外の映画祭で50を超える賞を受賞。 韓国では2019年8月に公開され、単館公開規模ながら観客動員15万に迫る異例の大ヒットとなった。 ウニは、2016年に韓国で発売されるやベストセラーとなった小説 「82年生まれ、キム・ジヨン」の主人公の少女時代とも重なる。 男性が優遇されることが当たり前だった時代、女性であるという理由で我慢しなくてはいけなかったこと、
それがおかしいということに気がつかなかったこと———。 2つの作品に共通するのは、そんな時代に生きた女性の物語であり、 声をあげようとする姿である。そして、それは韓国の同年代の女性の共感を呼んだ。 世界で最も小さい鳥のひとつでありながら、その羽を1 秒に80 回も羽ばたかせ、 蜜を求めて長く飛び続けるというはちどりは、希望、愛、生命力の象徴とされる。 その姿が主人公のウニと似ていると思った、と監督は語る。映画の中で、ウニは様々な感情を抱えながら、 成長し、この世界に羽ばたいていこうとする。その姿は、決してウニだけのものではないはずだ。
Story
1994 年、ソウル。家族と集合団地で暮らす14歳のウニは、学校に馴染めず、 別の学校に通う親友と遊んだり、男子学生や後輩女子とデートをしたりして過ごしていた。 両親は小さな店を必死に切り盛りし、 子供達の心の動きと向き合う余裕がない。ウニは、自分に無関心な大人に囲まれ、孤独な思いを抱えていた。
ある日、通っていた漢文塾に女性教師のヨンジがやってくる。ウニは、 自分の話に耳を傾けてくれるヨンジに次第に心を開いていく。ヨンジは、 ウニにとって初めて自分の人生を気にかけてくれる大人だった。 ある朝、ソンス大橋崩落の知らせが入る。それは、いつも姉が乗るバスが橋を通過する時間帯だった。 ほどなくして、ウニのもとにヨンジから一通の手紙と小包が届く。
Cast
パク・ジフ(ウニ)
2003年11月7日生まれ。小学5年生の頃にスカウトされ芸能界入り。
短編映画『わたしがいない家』(16)でデビュー。以降、『隠された時間』、
『操作された都市』(16)、『目撃者』(18)などに出演。
2018年、本作『はちどり』が釜山国際映画祭にて上映され、大きな注目を集めた。
キム・セビョク(ヨンジ)
1986年10月24日生まれ。レンタルビデオショップを経営する両親のもと、
多くの映画を観て育つ。
20代半ばに役者を志し、2011年映画『サニー 永遠の仲間たち』でデビュー。
映画『啐啄同時』(12/日本未公開)で演じた朝鮮族の少女役で強烈な印象を与え、
以降インディーズ映画界に欠かせない若手女優となる。『ひと夏のファンタジア』(14)
で百想芸術大賞映画部門新人女優賞にノミネート。その他の出演作に、ホン・サンス監督『それから』(17)など。
チョン・インギ(ウニの父)
1966年9月12日生まれ。高校生の時に演技の道を志し、
ソウル芸術大学に進学し演技を学ぶ。94年、映画『千年愛-クミホ-』でデビュ−。
その後も別の仕事で生計を立てるなど下積みの時期は続いたという。
これまでに出演した映画は100本以上にのぼる。39歳でTVドラマに初出演し、
大ヒットドラマ「シークレット・ガーデン」で認知を高める。
その他の出演作品に、映画『純愛中毒』(01)、『サマリア』(04)、『グエムル』(06)、
『ノーボーイズ、ノークライ』(09)、『犯罪都市』(18)など。
イ・スンヨン(ウニの母)
1977年1月21日生まれ。ソウル芸術大学で演技を学び、
2003年短編映画でデビュー。『息もできない』(08)、
マ・ドンソク主演『おもちゃ 玩具~虐げられる女たち~』(13)など、
映画を中心にコンスタントに出演。本作では、感情を失ったかのように
生きている母親役を演じ、印象を残す。社会現象ともなった大ヒットTVドラマ
「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」(18)に出演するなど、活躍の場を広げている。
パク・スヨン(ウニの姉スヒ)
キョンヒ大学校で哲学と演劇・映画を専攻し、2012年に短編映画でデビュー。
その後も短編映画を中心に活躍し、2017年『辺山』(日本未公開)で長編映画初出演を果たす。
キル・ヘヨン(ヨンジの母)
1964年4月11日生まれ。大学では文学を専攻し、演劇サークルに所属。
脚本執筆の傍ら、演技も始める。主に演劇でキャリアを積み、2002年にソウル国際公演芸術祭で演技賞を受賞。2003年に映画デビューを果たす。
2008年の映画『息もできない』では、主人公の相手役である女子高生の母親役を演じた。
2007年、同じく演劇人だった夫と死別し、一人息子を育てるために演技を教える仕事をするなど苦労を重ねたという。
Director
キム・ボラ(監督)
1981年11月30日生まれ。
東国大学映画映像学科を卒業後、コロンビア大学院で映画を学ぶ。
2011年に監督した短編『リコーダーのテスト』が、アメリカ監督協会による最優秀学生作品賞をはじめ、各国の映画祭で映画賞を受賞し注目を集める。
同作品は、2012年の学生アカデミー賞の韓国版ファイナリストにも残った。本作『はちどり』は、『リコーダーのテスト』で9歳だった主人公のウニのその後の物語である。
Review
この小さいながらも、ひときわ力強く羽ばたく鳥、
蜂(ハチ)なのか鳥(トリ)なのか分からない存在“はちどり”は、
子どもでもなく、大人でもない中学生にぴったりの愛称である。
この少女ははちどりのようにか弱いが、蜜を吸うこと以外にも、世の中を知っていくことに忙しい。
(中1でもなく、中3でもない)中2には誰も関心を持ってくれないから、1人で忙しい。
しかし、この映画を観終わった後、誰がはちどりをか弱いと言えるだろうか。もろくて貧弱なのは、実はこの世の中ではないだろうか。1994年のソンス大橋を見よ。
監督に強く頼む。早く続編を作ってほしい。ウニがじゃがいものチヂミをもぐもぐ噛んで食べ、どんな大人に成長していくのか見たい。あのあっけなく崩れた橋を飛んで越えていくカモメが見たい。
監督 パク・チャヌク
『オールドボーイ』『お嬢さん』